ハリネズミについて
ハリネズミについて
現在、国内で一般的に飼育されているハリネズミはヨツユビハリネズミという種類になります。
野生ではハリネズミは単独生活を行う夜行性の動物で広い行動範囲を持つ活動的な動物です。しかし、多くの飼育環境では十分な運動量をこなせず、ハリネズミの肥満がよくみられます。そのため、環境の整備もハリネズミの飼育において重要です。
ダニ寄生について
<症状・原因など>
ダニの感染はハリネズミでは非常に一般的な疾患です。
購入直後の幼若な子や1歳齢程度の若いハリネズミでよくみられますが、床材などで飼育環境に新たに設置したものについてきて感染する場合もあります。
症状としては針が抜けやすくなったり、鱗屑(フケ)が増加したりします。また、後ろ足で掻くような仕草が増えたり、真菌感染症の併発もあると重度では皮膚の赤みや腫れもみられたりします。
<治療・予防など>
診断としてはセロハンテープなどを用いて針やフケを採取し、顕微鏡でダニの虫卵や虫体を確認します。日をあけて何度か確認しないと発見できない場合もあり、発見できない場合でも症状からダニの駆虫薬を試験的に投与する場合もあります。
また、皮膚の真菌感染症や細菌感染症も併発している場合にはそれらの検査や治療も同時に行う場合もあります。
口腔内腫瘍について
<症状・原因など>
ハリネズミでは口腔内腫瘍の発生率は高く、中高齢(3歳以上)でよくみられます。
扁平上皮癌や線維腫性エプリス、悪性黒色腫、扁平上皮乳頭腫、骨肉腫など様々な腫瘍が発生しますが、中でも扁平上皮癌の発生率が高いです。
口腔内腫瘍では他の口腔内疾患(歯肉炎など)と同様に食欲の低下や出血、ヨダレ、口臭などの症状をみせます。
初期段階では特徴的な症状は見られず、偶然見つかる場合もあります。また、初期の腫瘍と歯肉炎の判別は難しいことが多く、病理検査などで歯肉炎として診断されたものが後に腫瘍と判断される場合もあります。
<治療・予防など>
口腔内腫瘍の外科的な切除手術が第一選択にはなるのですが、腫瘍の場所や病変部の状態により困難な場合が多いです。
内科的には栄養管理に加え皮下点滴や消炎鎮痛剤、止血剤、抗生剤を併用して食欲の維持に努めますが、根本的な治療とはなりません。
非常に大きく、完全に切除はできない場合は腫瘍を切除して少しでも小さくしたり、レーザーで蒸散させたりすることで状態を維持することもありますが、再拡大することが多いです。
ハリネズミふらつき症候群について
<症状・原因など>
初期症状としては丸まりにくくなったり、軽度のふらつきやつまずきなどの運動失調がみられたりし、数か月かけて徐々に進行する場合が多いです。
発症は2歳齢以下が多いですが、全年齢で発症する可能性があります。
似たような症状を示す可能性のある疾患としては中耳炎や内耳炎、中枢神経腫瘍、低カルシウム血症、椎間板疾患などがあるため、問診や視診、レントゲン検査などで判断することになります。
ハリネズミふらつき症候群(Wobbly hedgehog syndrome:WHS)は遺伝性疾患の可能性があるとされていますが、原因の特定はできておらず、生前の確定診断は困難とされています。
<治療・予防など>
WHSは原因の特定されていない進行性の疾患で有効な治療法は確立されていません。そのため、似た疾患との鑑別を行って、消炎鎮痛剤やビタミンB製剤、抗生物質、皮下点滴などの症状を和らげてあげることを目的にした対症療法・支持療法がメインとなります。